10代、20代のころは想像もしませんでしたが、39歳になって「不全」が他人ごとではなくなってきました。
まだそう頻繁ということはありませんが、ごくたまに「あれ、今日はどうしたんだろう」と焦ることがあります。
まだ30代という意識がありますので、不安は小さくありません。
一度のショックが次の不安に結びつくという悲しい連鎖です。

とかく男の性はままならないもので、勃起すべき時にそうならず、勃起してはまずい時にそうなってしまう。
これは今年の夏の話なのですが、夕方のラッシュの電車に乗ったことがありました。

私は職場へは車通勤。
プライベートでも車を使うことが多く、電車に乗る機会はあまりありません。
ましてラッシュを経験するのは、いったいいつ以来か、自分でも思い出せないくらい久しぶりのことでした。

テレビニュースなどで、「痴漢の冤罪」という話をしばしば耳目にして、「満員電車に乗る機会はないから、自分には関係ない」と思っていました。
そのことがふと頭に浮かび、冤罪になっては大変と、電車に乗り込むときから意識していました。

とにかく女性、特に若い女性と密着しないように、と注意してぎゅうぎゅうの車内へ。
微妙に体の向きを加減して、男と向かい合わせに密着する態勢をとることができました。

その形のまま電車は走り出しました。
ほっとしたのもつかのま、電車の振動が体に伝わって、また股間が向かい男性の太ももあたりに押し付けられていたために、刺激されてしまい、なんと時ならぬ勃起状態になってしまったのです。

ああ、よかった、これが女性だったら大変なことになるところだった、と思いましたが、だんだん別の不安がもたげてきました。
相手の男性は20代のサラリーマン風で、乗り込むときにちらっと見た感じでは、かなりのイケメンです。
彼は今のこの事態をどう感じているのだろう、と考えたからです。

そもそも私は女性を避けるために意識的に彼に密着したわけで、もしそれを彼が気づいていたとしたら、これはただならないことです。
つまり私は彼を目当てに密着して、勃起を太ももに押し付けている変態おやじ、ということになってしまうではないですか。

そう気づいて、焦りました。
といって、ぎゅうぎゅう状態で体の向きを変えるのは至難の技です。
下手に動くと、その動き自体が痴漢行為と思われないでもありません。
焦れば焦るほど、勃起率が増していき、100%状態にまで達してしまいました。
なぜこんな時こそ不全状態が訪れないのか、つくずく男の性のままならさを情けなく思いました。

やむなく、次の駅で降りてしまいました。
横の人からドアのほうへ押し出されるようになったので、これ幸いとそのまま降りたのです。
おり際にちらりとそのサラリーマンの顔が見えたのですが、怒った顔こちらをにらみつけていました。
やっぱりそうです。
彼は私を変態おやじと思っていたのです。

ホームで待つ間にクールダウンしたので、次の電車に乗りました。
あのサラリーマンの怒りの顔が目に焼き付いて、さいわいもう勃起することはなく、無事目的地までたどりつけました。